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レシピ動画「DELISH KITCHEN」のエブリーが東証グロースへ — 食の1st partyデータで挑むリテールメディアの実像

レシピ動画メディア「DELISH KITCHEN」を運営するエブリーが2026年8月、東証グロースに上場予定。食の1st partyデータを軸に広告と小売店頭DXを束ねるリテールメディア事業の構造、進行期の黒字転換、戦略株主の顔ぶれを、有価証券届出書の公開情報から読み解く。

#メディア・広告#IPO#東証グロース#リテールメディア

レシピ動画「DELISH KITCHEN」のエブリーが東証グロースへ — 食の1st partyデータで挑むリテールメディアの実像

この記事の要点

レシピ動画メディア「DELISH KITCHEN」を運営する株式会社エブリーが、2026年8月に東京証券取引所グロース市場へ上場を予定しています(主幹事:SMBC日興証券)。同社の事業の本質は「レシピ動画の会社」という見え方を超えており、メディアで集めた食の利用者基盤を起点に、食品メーカー向け広告と小売店頭のデジタル化を「食生活データ」で束ねるリテールメディア事業にあります。注目すべきは収益フェーズの転換で、長く先行投資による赤字が続いたのち、進行期(2026年6月期)の第3四半期累計で営業利益・経常利益・四半期純利益のすべてが黒字に転じた点です(有価証券届出書記載)。本記事では、この事業構造・市場環境・株主構成を公開一次情報から整理します。投資勧誘を目的とするものではありません。

本記事は上場前・仮条件決定前(仮条件提示予定 2026年7月16日)時点の公開情報に基づきます。想定価格・時価総額・各種マルチプル等のバリュエーション数値は、仮条件が未確定のため本記事では取り扱いません。

何の会社か — 事業の本質

エブリーは2015年設立。国内最大級のレシピ動画メディア「DELISH KITCHEN」(管理栄養士監修のレシピコンテンツ累計5万7,000本超、月間利用者数3,100万超)を中核に、ファミリー向け動画メディア「トモニテ」等を運営しています(届出書記載)。

事業ロジックは三層構造として捉えると分かりやすいでしょう(DM独自フレーミング)。メディアを「入口」、利用者の食行動データ(1st party data)を「資産」、広告と小売DXを「出口」とする構造です。会計上は「メディアプラットフォーム事業」の単一セグメントですが、実態は次の二本柱で構成されます。

  • Marketing Solution(主力・BtoB):食品メーカー等の広告主に向けたタイアップ広告、ディスプレイ広告、全国の小売店頭デジタルサイネージ(1万1,000台超)に動画広告を配信する「ストアビジョン広告」、成功報酬型のユーザーマッチング広告、運用型広告、小売DX支援「retail HUB」など。
  • Consumer(BtoC):DELISH KITCHENアプリの月額課金(プレミアムサービス)と、冷凍弁当「ミールズ」の定期宅配(Eコマース)。

3rd party cookie規制が強まるなか、自社が直接保有する1st party dataの重要性は構造的に高まっています。エブリーはオンライン(アプリ・ウェブ)とオフライン(店頭サイネージ・購買データ)の双方で食データを取得できる点を、自社ソリューションの優位性として位置づけています(届出書記載)。

flowchart LR
  A["メディア(入口)<br/>DELISH KITCHEN / トモニテ<br/>月間利用者3,100万超"] --> B["1st party data(資産)<br/>食生活行動ビッグデータ<br/>オンライン×オフライン"]
  B --> C["Marketing Solution(出口)<br/>食品メーカー広告<br/>店頭サイネージ1万1,000台超"]
  B --> D["retail HUB(出口)<br/>小売DX支援"]
  B --> E["Consumer<br/>月額課金 / 冷凍弁当EC"]

なぜ今、上場するのか

事業フェーズの観点では、長い先行投資期を経て収益化局面に入ったタイミングにあたります。売上高は2021年6月期の約20.9億円から2025年6月期の約42.5億円へと段階的に拡大し、損失は急速に縮小、進行期(2026年6月期)の第3四半期累計で各利益が黒字へ転じました(届出書記載)。主力Marketing Solutionでは、顧客単価1,000万円超の「ロイヤル顧客」が増加し、顧客単価も向上しています。「広く薄く」から「既存顧客に複合的なソリューションを束ねて深く」へとモデルが進化していると読めます(DM独自フレーミング)。

公募増資による手取金の使途は、届出書によれば採用活動費・人件費および広告宣伝費であり、主力事業のさらなる成長とデータ基盤整備に充てる計画です。設備投資型ではなく成長投資型の使途といえます。

市場と立ち位置

エブリーが軸足を置くリテールメディアは、広告予算が「自社データを持つ媒体」へ構造シフトするなかで拡大している領域です。民間調査によれば、国内リテールメディア広告市場は2025年に約6,066億円、2029年には約1兆3,174億円規模への拡大が見込まれています(出典:CARTA HOLDINGS/デジタルインファクト、2026年1月発表)。このうちエブリーが主戦場とする店舗事業者領域(デジタルサイネージ・店頭デジタル広告)は2025年に830億円、2029年には約1,939億円(約2.3倍)への成長が予測されています(同調査)。

市場予測は民間調査に依拠するため幅をもって捉える必要がありますが(△要検証)、食という購買頻度の高い領域で、オンラインのメディアとオフラインの店頭サイネージを一気通貫で押さえている点は、単独の媒体社や単独のサイネージ事業者にはない位置取りといえます(DM独自フレーミング)。

強みと論点(DM視点)

強みとして挙げられるのは、第一に時間 ── 2015年以来積み上げた食行動データは短期に再現しにくいこと。第二に物理網 ── 全国1万1,000台超の店頭サイネージは設置・保守の営業網なしには構築できないこと。第三に提携 ── 後述する戦略株主が、データの「入口(消費者接点)」と「出口(広告主)」の双方に関与していること。検索型レシピサイトという先行モデルが伸び悩むなかで、動画×データ×店頭という新しい軸を打ち出している構図が読み取れます(DM独自フレーミング)。

一方で**論点(弱み・観察点)**も明確です。広告は景気感応度のある変動収益であり、継続課金型(ストック)の比重はまだ大きくありません。また主要取引先であるKDDIグループとの取引について、届出書は「2026年9月30日をもって、au PAYマーケット上のライブコマースの共同運営に関する契約を終了する旨の通知を受領しており、以降の販売が減少する可能性が高い」と明記しています。特定取引先への依存度の低減が進むかは、上場後の重要な観察軸となります。

ファイナンス・株主構成

オファリングは、公募と既存株主による売出し、およびオーバーアロットメントによる売出しで構成され、主幹事はSMBC日興証券が単独で務めます(届出書記載)。上場予定日は2026年8月4日、仮条件の提示は7月16日、公開価格の決定は7月27日が予定されています。

株主構成は、創業者である代表取締役の吉田大成氏(GREEの取締役執行役員常務等を経て2015年に同社を創業)を筆頭に、KDDI、伊藤忠食品、加藤産業、味の素といった通信・食品卸・食品メーカーが名を連ねます(届出書「株主の状況」記載)。事業の「入口」と「出口」を支える事業会社が資本面でも関与している構成で、ベンチャーキャピタルも複数参画しています。ロックアップは、主要VCを中心とする90日間(2027年に向けた一部)と、創業者・事業会社等を対象とする180日間の二層構造が設定されています。

バリュエーション(想定時価総額・各種マルチプル等)は、仮条件・公開価格が未確定のため本記事では取り扱いません。仮条件確定後に、出典・留保・免責を付したうえで別途整理する予定です。

上場後に見るべきポイント

投資勧誘ではなく観察軸として、次の点が論点になると考えられます(いずれも留保つきの見立て)。

  • 黒字転換の持続性:進行期通期の確定値で、第3四半期累計で示された収益性が通期でも維持されるか。
  • KDDIグループ取引の減少影響:2026年9月30日のライブコマース契約終了に伴う売上影響が、新規顧客開拓でどの程度補完されるか。
  • 需給イベント:ロックアップ解除のタイミング(90日・180日)における株式の需給。
  • 顧客集中とストック性:ロイヤル顧客の積み上がりと、継続課金型収益の比重の変化。
  • 市場成長の実現度:リテールメディア市場予測(民間調査)の実現度と、同社のシェア推移。

免責事項

本記事は Design Management LLC による、公表情報に基づく独自の分析・見解であり、以下の点をご理解のうえお読みください。

  1. 本記事は、特定の金融商品の取引を推奨・勧誘するものではありません。
  2. 本記事に含まれる仮説・予測・評価は、執筆時点で公表されている情報に基づく当社独自の解釈であり、関係企業の見解を代弁するものではありません。
  3. 投資判断・経営判断にあたっては、必ず一次情報(適時開示資料・有価証券報告書・有価証券届出書・目論見書・IR資料等)をご確認のうえ、ご自身の責任にて行ってください。
  4. 本記事に含まれる情報の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。
  5. 本記事の内容は、執筆時点(2026-06-30)の情報に基づいており、その後の事情変更を反映していません。
  6. 本記事中の「(DM独自フレーミング)」と付した解釈は、当社独自の視点による分析であり、客観的事実とは区別されます。

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